筆者について

筆者が拒食症になった原因・「がりがりの身体」は、自分を守るたった1つの鎧

筆者本人のやせているときと小康状態になったときの対比の写真を動画で掲載しています。 体重は最低20キロ、最高40キロくらいです。まるで別人なので、よかったら是非みてみてください。

拒食症の人は、周囲が見ると驚くほどがりがりに痩せています。

そのがりがりの身体を、本人は「良い」と思っているようにも見えるので、周囲は不思議に思うこともあるでしょう。

実は、このがりがりの骨だけの身体は、本人にとって、周囲から自分を守るための「鎧」ではないかと思っています。

心細くて死にそうな自分を、がりがりの鎧で固めて守っているのです。

今回は、私たちの心細さと辛さ、がりがりの身体にこだわる理由について、考えてみたいと思います。

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1.拒食症の人は、自己肯定感がゼロ

拒食症の人は、自己肯定感が低いことが多いです。

つまり、自分を適切に評価できないのです。

そんなことを言うと、「普通の人でも、自分を好きだなんて思っていない」と言うかも知れません。

しかし、私たちの自己否定感は、そんな程度のものではありません。常に自分を否定し続けていると思えば良いです。起きている間、24時間ずっとです。

私の場合も

「自分は最低な人間」

「人間として、価値が低い」

と感じます。

たとえば昔、身分制度があった頃の「奴隷」のようなものです。

「そもそも価値が低い」とされているので、何をしても「ダメ」なのです。

人よりうまくできても「ダメ」です。「自分」でいる限り、価値が低いので、認めることができません。

もちろん、人よりできなかったら、さらに「ダメ」です。

だから、自分を極限まで追い込みます。

追い込んでも満足することはなく、切りがありません。

自分がくだらなく、汚いもののようにも感じます。

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2.自己否定感が強くなる原因は、家族関係

私がこうなったのは、母親の影響が大きいです。

母が、私が小さい頃から何をしても認めることがなく

「できて当たり前」

という態度で接していたからです。

そのことで私は

「周りの子は、良くできたら褒められているけれど、自分の場合は褒められない」

「周りの子は、心配してもらっているけれど、自分は心配されるということがない」

「これは、自分が周りの子よりも価値が低いからに違いない」

小さい頃からそういう考えをすり込まれて、自己肯定感を持たない人格に育ちました。

中学校の頃も高校の頃も、ずっと自分がしょうもなく、心細く、価値がなく、居場所がないと感じていました

3.すべてを拒絶することで、自分を守る

こんな自己否定感の強い状態で、人間がずっと心の平衡を保てるはずはありません。

私の自己否定感が爆発してしまったのが、大学受験のときです。

このとき、家族内でもいろいろあって、やはり私が大学受験するというのに、母は私のことをほとんど無視していました。

それまでもずっとそうでしたが、そのときは、私ももう限界でした。

「愛されたい、認められたい」

そう思ってどんなにもがいても、親は私の方を見ない、愛さない。

結局、求めても認められずに苦しむくらいなら、

「すべてを自分の方から断ち切ろう」と思いました。

自分から断ち切ったら、

「拒絶されて苦しい思い」

をせずに済みます。

これまでの辛かった17年間のジレンマから、解放されるのです。

それで、私はご飯を食べなくなりました。

不思議と気持ちが落ち着きました。

それまでは、母が私のことを見ないので苦しんでいましたが、

「もうご飯も食べないし、何も受け付けない」

そう思ったら、何となく平気な気分になりました。

すべてを拒絶して、体重をコントロールすることだけで、自分を保つようになりました。

体重はどんどん減っていきましたが、心は快適でした。

もう、母を求めても拒絶される苦しみがなくなったからです。

「ずっと1人でいいや」「私は1人」

そう思いながら、毎日を過ごしていました。

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4.心が完全に冷え切っていて、骨の鎧に閉じこもる

そうして世の中のすべてを断ち切り、骨の鎧に閉じこもったのが、私の拒食の始まりです。

体重が減り、身体がガリガリになりました。

がりがりの硬い身体は、周囲から見たら頼りなげに見えるのかも知れませんが、私にとっては自分を守る唯一の鎧でした。

周囲の世界は、私を攻撃してくるだけ。

私が求めても、手に入らない。振り向いてくれない。

自分はくだらない人間。何をしても、人よりうまくこなしても、自分が自分でいる限りは、どうしようもない。

それならば、自分一人の世界に閉じこもるしかないでしょう?

だから、私は1人になった。

1人でガリガリになり、骨の鎧に閉じこもることを選びました。

心は冷え切って動かなくなりましたが、傷つくことがなくなりました。

私は、そのがりがりの鎧から、今でも抜けることができません。

今の私も、昔と変わらず自己肯定感が低いままです。

自分はしょうも無い人間だと思いますし、自分を責めます。

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5.拒食症の人に「体重を増やせ」と言っても無駄

私たちに、単に「体重を増やせ」と言っても無駄なのは、こういった心の問題があるからです。

「身体が元気になる、健康になる、キレイになる」

そんなことは、何の意味も無いのです。

がりがりの身体がなくなったら、自分を攻撃してくる世の中と対峙しなければなりません。

自己肯定感が低い限り、そんなことは不可能です。脆い心が、一瞬で粉砕されてしまいます。

心の問題を解決しないと、この病気は治らないのです。

「拒食症は、体重さえ増やせば治る」

なんていうのは嘘です。

私も一時、体重が普通程度に戻ったことがありますが、根本的な心の問題が解消されていなかったので、結局前より痩せて、酷い瀕死の状態になりました。

 

6.拒食症を知ることのできる本

私たち拒食症の人の心の動きを丁寧に書いた小説があります。

「鏡の中の少女」という本です。

この本の主人公フランチェスカは、ダイエットをきっかけに拒食症になります。

自分でも気づいていませんが、本当の理由は、家族の中に居場所がなかったからです。

主人公は「フランチェスカ」という名前ですが、食べない自分(拒食の自分)のことは「ケサ」と呼んでいます。

つらいときには「ケサケサ」と心の中でつぶやくと「強い自分」になります。

「ケサ」は、周囲が自分をかまわなくても、傷ついたりはしません。

がりがりの鎧があるという私の発想と同じです。

 

私は、最初に拒食症になったときに、この本を読みました。そして、「私と一緒だ!」と思い、衝撃を受けた覚えがあります。

私の心の中にも、脆くて弱いフランチェスカと、がりがりの鎧でフランチェスカを守ろうとするケサがいます。

もしも、拒食症について知りたい場合には、是非とも読んで見ていただきたい一冊です。

鏡の中の少女

 

続編の、鏡の中の孤独です。


鏡の中の孤独 (集英社文庫)

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